最新医療情報

認知症の予防

2017年7月21日 更新

7月20日医学雑誌Lancetに欧米の24名の研究者が共同執筆した認知症の予防・治療介入・患者や家族のケアに関する62頁にわたる論文が公表され、マスコミでも取り上げられました。今回は予防に関する部分を簡単にご紹介します。

2015年の時点では全世界の認知症患者は4,700万人でしたが、2050年までには3倍になると予想されています。最近、米国、イギリス、スウェーデン、オランダ、カナダでは認知症の発症率や有病率が減少していますが、中国、日本では増加しています。

多数の研究から、認知症を予防するためには、45〜65歳までの中年期には、難聴対策、高血圧治療、肥満の是正が、65歳以上の老年期では禁煙、うつ状態の改善、運動不足の解消、社会的孤立の解消、糖尿病治療が有効と考えられます。これらの対策で認知症の30%程度が予防できると考えられます。

論文(英語)
DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(17)31363-6

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心血管病を予防する脂質摂取: アメリカ心臓協会会長からの勧告

2017年6月20日 更新

心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病を予防するための脂質摂取に関する勧告です。2017年6月15日アメリカ心臓病協会の機関誌Circulationにオンライン速報されました。脂質は量ではなく質が重要であり、摂取する動物性飽和脂肪酸を植物性多価不飽和脂肪酸(n-6、リノール酸など)に変更することが強く求められています。低脂肪食が求められているのではありません。なお、この勧告は動物性飽和脂肪酸摂取が多い米国向けのものであり、わが国では飽和脂肪酸摂取量は多くなく糖質摂取が過剰の傾向のため、むしろ、糖質の過剰摂取を避け、植物性多価不飽和脂肪酸(n-6、リノール酸など)を増量させるということが厚労省の方針(2015年から実施)となっています。しかし、LDLコレステロールが高値の方は、やはり、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸で置き換えてください。

n-6多価不飽和脂肪酸であるリノール酸は一般的なサラダ油、天ぷら油などに多く含まれています。
なお、植物油でもパーム油やココナッツ油には飽和脂肪酸が多く含まれており勧められません。

なお、肥満に対しても低脂肪食が優れている訳ではないことが2015年に論文として公表されています。

  • 無作為化比較試験では、摂取する動物性飽和脂肪酸を植物性多価不飽和脂肪酸で置き換えると(動物性飽和脂肪酸を減らし、植物性多価不飽和脂肪酸を増やすと)心血管病が減少することが示されている。
  • 飽和脂肪酸を含む総脂質を炭水化物で置換しても(脂質を減らし高炭水化物を増やしても)冠動脈疾患は減少しない。
  • 大規模な前向き観察研究では、飽和脂肪酸摂取が少なく、多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸摂取が多いと心血管病発症率や死亡率が低いことが示されている。
  • 飽和脂肪酸は、動脈硬化や心血管病の主な原因であるLDLコレステロールを増加させ、多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸で置換するとLDLコレステロールが減少する。
  • 飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸で置換すると、中性脂肪が減少する。
  • 飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸で置換すると、動脈硬化が予防・改善される(ヒト以外の霊長類で示されている)。
  • 様々な根拠から、飽和脂肪酸の置換に際しては、多価不飽和脂肪酸(主にn-6、リノール酸)のほうが、一価不飽和脂肪酸(主にオレイン酸)より、心血管病を、若干、より強く予防すると考えられる。
  • 上記は、一般的な健康食、例えば野菜・全果物・ナッツ・蛋白質などをバランスよく摂取するDASH食や地中海食、また、良質な炭水化物(全粒穀物や全果実)の摂取と共に行われることが必要である。
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SGLT2阻害薬カナグリフロジンによる心血管および腎イベントの減少

2017年6月15日 更新

2015年SGLT2阻害薬エンパグリフロジンにより、心血管疾患の既往者において、複合心血管イベント(心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中)が減少し、特に心血管死および心不全入院が大きく減少することが報告されました(EMPA-REG OUTCOME研究)。また、2016年にはこの同じ研究で、腎障害の進行も防止できる可能性が示唆されました。そこで、このエンパグリフロジンの心臓や腎臓に対する有益な効果が他のSGLT2阻害薬にも認められるか、また、心血管疾患を診断されていない2型糖尿病患者でも同様の効果が認められるかに関して検証が待たれていました。6月12日米国糖尿病学会において、やはりSGLT2阻害薬であるカナグリフロジンの効果が報告され、同時に論文として公開されました。結論として、カナグリフロジンでも、また、心血管疾患を診断されていない患者でもEMPA-REG OUTCOME研究と同様の効果が期待できると考えられます。

論文抄録

カナグリフロジンは高血糖改善以外に血圧、体重、尿アルブミンを低下させる効果を持っています。今回、心血管病発症リスクが高い10,142人の2型糖尿病患者を無作為にカナグリフロジンまたはプラセボ(偽薬)に割り付け平均188.2週間治療しました。一次アウトカムは心血管死+非致死性心筋梗塞+比致死性脳卒中の複合心血管イベントでした。

患者の平均年齢は63.3歳で、35.8%が女性でした。平均糖尿病罹病期間は13.5年間で、65.6%が心血管疾患の既往を有していました。カナグリフロジン群ではプラセボ群に比し一次アウトカムが統計学的に有意に減少していました(1000人年当たり26.9と31.5、ハザード比0.86(95%信頼限界0.75-0.97)、P=0.02で優越性あり)。あらかじめ規定された仮説検定手順により腎アウトカムには有意差検定は適応されませんでしたが、アルブミン尿の進行(ハザード比0.73(0.67-0.79)、および、糸球体ろ過率の40%以上の低下+腎代替療法開始+腎臓が原因での死亡の複合腎アウトカム(ハザード比0.60(0.47-0.77))においてベネフィットを有する可能性が示されました。有害事象はかねてから指摘されているもの以外に、下肢切断(主に足趾、中足切断)の増加(1000人年当たり6.3と3.4、ハザード比1.97(1.41-2.75))が認められました。

解説

わが国では心血管疾患による死亡率は、糖尿病患者では非糖尿病者に比し、男性で約2倍、女性で2~4倍の高率になっており、糖尿病患者の心血管死抑制は重要な課題です。

今回の論文から、カナグリフロジンにおいてもエンパグリフロジンと同様の心血管死・心血管病予防効果、腎障害進行防止効果が認められると考えられます。従って、この様な効果はSGLT2阻害薬全般に認められる可能性が高いと考えられます。また、一次アウトカムに関し心血管疾患の有無によって統計学的に有意な差は認められず、心血管疾患を有していない患者においても基本的に同様の効果を示す可能性が考えられます。

カナグリフロジン群とプラセボ群のHbA1cの差は0.58%、体重差は1.6 kg、収縮期血圧の差は3.9 mmHg、拡張期血圧の差は1.9 mmHgでした。HbA1cの差が少ないことから、今回認められた複合心血管イベント抑制効果が高血糖改善作用だけでもたらされたとは考えにくく、2型糖尿病患者の予後を改善させる治療薬として単なる高血糖改善以外にSGLT2阻害薬がはたす役割が大きいと考えられます。なお、今回のカナグリフロジンの研究とEMPA-REG OUTCOME研究とは対象患者が異なるため、心血管アウトカムの抑制に関し、エンパグリフロジンとカナグリフロジンとの優劣は比較できません。また、まれな有害事象ではありますが、エンパグリフロジンや他のSGLT2阻害薬においても下肢切断リスクの評価が必要と考えられます。なお、この研究には韓国などアジアを含む多数の国が参加しましたが、日本は参加していませんでした。

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1型糖尿病における運動時の血糖管理(3)

2017年6月15日 更新

5月26日、6月6日に続いて1型糖尿病患者の運動時の血糖マネージメントに関するコンセンサスをご紹介し、これにて完結とさせていただきます。なお、実際の運動時の対応に関しては主治医にご相談ください。

長時間の有酸素運動および短時間の高強度運動時の血糖変動防止目的での対応

長時間の耐久運動(主に有酸素運動) 短時間の強い運動(有酸素および無酸素運動)
運動前の食事時の追加(ボーラス)インスリン減量 120分以内に運動を開始する場合に推奨。(減量の程度は運動のタイミング、種類、持続時間、強度による) 減量は推奨されない。高血糖になればインスリンの追加が必要になる可能性あり。
運動前の基礎インスリン減量(約20%減量)(複数回の基礎インスリン注射の場合) 特に運動頻度が3日に1回未満の場合、また、当日中の運動頻度が高い場合には有用。 推奨されない。
運動後の夜間基礎インスリン減量(約20%減量)( 複数回の基礎インスリン注射やCSIIの場合)(夜間低血糖防止目的) 特に運動が午後や夕方に行われた場合には重要。 高強度インターバル運動後の低血糖予防に有用。
一時的な基礎(basal)注入量の変更(CSIIの場合) 運動中にはポンプの停止も可能。運動前(最大約90分前)からの減量が理想的。血糖のトレンドにより、運動終了時、または、回復期に通常量に戻す。 高血糖の予防や治療目的で、運動中や直後に注入量の増量が必要になる可能性あり。
運動前の糖質摂取 6月6日の(2)を参照。 通常不要。
運動中の糖質摂取 インスリン量の調節が行われなかった場合には1時間当たり60gまでの糖質が必要。6月6日の(2)を参照。 通常不要。
運動後の糖質摂取 低血糖防止や回復促進目的で有用。糖質当たりのインスリン量の減量などが必要となる可能性あり。 低血糖防止や回復促進目的で有用。但し、高血糖の場合には摂取を遅らせること。糖質当たりのインスリン量の減量などが必要となる可能性あり。
運動前、または、後の全力疾走 低血糖リスク低下に有用である可能性あり。 高血糖リスク上昇の可能性あり。有酸素運動の延長によるクールダウンを考慮すること。

90分以内に運動を開始する場合の摂食時追加(ボーラス)インスリン減量の目安

持続時間30分の運動 持続時間60分の運動
軽度の有酸素運動(最大酸素消費の25%程度) -25% -50%
中程度の有酸素運動(最大酸素消費の50%程度) -50% -75%
強い有酸素運動(最大酸素消費の70~75%) -75% (通常、この強度の運動を60分間実施することは困難)
極めて強い有酸素・無酸素運動(最大酸素消費の80%以上) 減量しない (通常、この強度の運動を60分間実施することは困難)

論文(英語)
http://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(17)30014-1/abstract

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HbA1cは糖尿病治療研究の正しい指標か?

2017年6月8日 更新

最近のいくつかの大規模臨床試験の結果は2型糖尿病の治療に大きな変革をもたらしつつあります。以下に、最近米国医師会雑誌という主要な医学誌に発表された論文(見解)を抜粋してご紹介します。

2型糖尿病治療のゴールは糖尿病合併症の予防を通じて患者のQOLを改善し、寿命も延長させることです。従来、高血糖の改善で合併症予防が可能であると想定され、糖尿病治療薬は血糖やHbA1cを改善させる効果で評価されてきました。しかし、最近のいくつかの大規模臨床試験で、同程度にHbA1cを下げても薬によって合併症予防効果が異なることが示されてきました。糖尿病の研究は、かつてのように、血糖やHbA1cという代理的な指標ではなく、心臓病や死亡率という臨床的結果を評価して治療薬を探索する手法に方向転換しつつあります。

HbA1c7%未満を目標に血糖を低下させるいくつかの臨床試験では、明らかな心血管病予防効果は得らず、また、細小血管障害に関しても、失明や腎不全などの最終的転帰に関する明らかな予防効果は証明されませんでした。一方、異なる糖尿病治療薬を用いて同程度の血糖改善を達成した場合に、心血管病の出現に差が出るかを検討した臨床試験がいくつか行われ、エンパグリフロジンというSGLT2阻害薬やリラグルタイド(海外用量)というGLP-1受容体作動薬で心血管イベント、心血管死、全死亡が減少することが示されました。しかし、DPP-4阻害薬を用いたいくつかの臨床試験ではこのような効果は認められませんでした。これらの結果から、どの様に(どの様な薬を用いて)高血糖を改善させるかが合併症の予防に重要であると考えられるようになってきました。

糖尿病治療は、血糖・HbA1cのレベルだけでなく、個々の患者の合併症の状況などを考慮して行われなければなりません。例えば、心血管疾患の既往を有する患者ではエンパグリフロジンやリラグルタイド(海外用量)を用いることで利益が得られる可能性が考えられます。

細小血管障害に関しても、必ずしもHbA1cの低下でこれらの合併症が予防できるわけではなく、同程度に血糖を下げても同程度の細小血管障害予防効果が期待できるわけではありません。例えば、エンパグリフロジンは血糖コントロールにほとんど差がなくても腎症のリスクを低下させます。セマグルタイド(未発売)というGLP-1受容体作動薬も腎症の進行を防ぎますが網膜症のリスクは増加させます。

従来から使用されている糖尿病治療薬についても、薬剤によってどの様な合併症予防効果が得られるかを検証することが必要です。

論文(英語) http://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2599765

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