内科の最新医療情報

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2型糖尿病の新しい治療ガイドライン

2018年10月15日 更新

10月4日米国糖尿病学会・欧州糖尿病学会から、2型糖尿病の高血糖治療の新しいガイドラインが出されました。2型糖尿病治療のゴールである合併症の抑制とQOLの維持を達成するため、使用する薬剤を各患者の病状などに応じて患者とともに決めるという内容です。病状によりますが、血糖値以上に薬剤選択の重要性を強調したもので、2型糖尿病治療の新しい考え方です。

わが国では2型糖尿患者の死因の1位は悪性新生物ですが、欧米では心血管疾患です。しかし、わが国でも、非糖尿病者と比べて糖尿病が最も悪影響を与えるのは、悪性新生物による死亡率ではなく、心血管疾患による死亡率です。従って、今回のガイドラインはわが国にとっても大変示唆に富むものです。

患者さんの病状などにより、メトホルミン以外に以下の薬剤が推奨されています。

  1. 動脈硬化性心血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の既往がある患者
    • 動脈硬化性心血管疾患が懸念される患者: 効果が示されているGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬
    • 心不全が懸念される患者: SGLT2阻害薬
  2. 慢性腎臓病の患者: 効果が示されているSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬
  3. 体重増加を避けたい・減量が必要な患者: GLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬
  4. 特に低血糖を避けたい患者: SU薬およびインスリン以外の治療薬
  5. なお、上記1、2で、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が使用されていないが目標HbA1cに達している患者では、現在使用中の薬剤を中止してでもこれらの薬剤の使用を考慮するよう記されています。

    論文(英語):
    DOI: 10.2337/dci180033

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飽和脂肪酸過剰摂取による肝臓内中性脂肪の増加

2018年6月4日 更新

肝臓内の中性脂肪が増加する非アルコール性脂肪肝は糖尿病や心血管疾患のリスクを上げます。肝臓内で中性脂肪の原料になる脂肪酸は、脂肪分解によって脂肪細胞から放出された脂肪酸が肝臓に取り込まれたもの、肝臓内で糖質が脂肪酸に変わったもの、および、食事で摂取して肝臓に取り込まれたものです。今回、同じカロリーでも摂取する栄養素の種類により肝臓内中性脂肪の増加程度が異なることが報告されました。

北欧での研究ですが、38人の肥満者に毎日1000キロカロリーを余分に摂取させた実験です。バター・ココナツ油・チーズなどの飽和脂肪酸を多く摂取させる群、オリーブ油・ナッツなどの不飽和脂肪酸を多く摂取させる群、オレンジジュース・甘味飲料・キャンディーなど糖類(糖質の中でブドウ糖、果糖などの単糖類と砂糖などの二糖類を合わせたもの)を多く摂取させる群の3群に分け、3週間摂取させました。

肝臓内中性脂肪は飽和脂肪酸を過剰摂取した群で平均55%、不飽和脂肪酸を過剰摂取させた群で平均15%、糖類を過剰摂取させた群では平均33%増加しました。飽和脂肪酸過剰摂取群では脂肪細胞での脂肪分解が促進され、インスリン抵抗性が増加しました。

カロリーの過剰摂取、特に飽和脂肪酸や糖類の過剰摂取は避けた方がよいと考えられます。

論文(英語):
https://doi.org/10.2337/dc18-0071

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認知症の予防

2017年7月21日 更新

7月20日医学雑誌Lancetに欧米の24名の研究者が共同執筆した認知症の予防・治療介入・患者や家族のケアに関する62頁にわたる論文が公表され、マスコミでも取り上げられました。今回は予防に関する部分を簡単にご紹介します。

2015年の時点では全世界の認知症患者は4,700万人でしたが、2050年までには3倍になると予想されています。最近、米国、イギリス、スウェーデン、オランダ、カナダでは認知症の発症率や有病率が減少していますが、中国、日本では増加しています。

多数の研究から、認知症を予防するためには、45〜65歳までの中年期には、難聴対策、高血圧治療、肥満の是正が、65歳以上の老年期では禁煙、うつ状態の改善、運動不足の解消、社会的孤立の解消、糖尿病治療が有効と考えられます。これらの対策で認知症の30%程度が予防できると考えられます。

論文(英語)
DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(17)31363-6

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心血管病を予防する脂質摂取: アメリカ心臓協会会長からの勧告

2017年6月20日 更新

心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病を予防するための脂質摂取に関する勧告です。2017年6月15日アメリカ心臓病協会の機関誌Circulationにオンライン速報されました。脂質は量ではなく質が重要であり、摂取する動物性飽和脂肪酸を植物性多価不飽和脂肪酸(n-6、リノール酸など)に変更することが強く求められています。低脂肪食が求められているのではありません。なお、この勧告は動物性飽和脂肪酸摂取が多い米国向けのものであり、わが国では飽和脂肪酸摂取量は多くなく糖質摂取が過剰の傾向のため、むしろ、糖質の過剰摂取を避け、植物性多価不飽和脂肪酸(n-6、リノール酸など)を増量させるということが厚労省の方針(2015年から実施)となっています。しかし、LDLコレステロールが高値の方は、やはり、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸で置き換えてください。

n-6多価不飽和脂肪酸であるリノール酸は一般的なサラダ油、天ぷら油などに多く含まれています。
なお、植物油でもパーム油やココナッツ油には飽和脂肪酸が多く含まれており勧められません。

なお、肥満に対しても低脂肪食が優れている訳ではないことが2015年に論文として公表されています。

  • 無作為化比較試験では、摂取する動物性飽和脂肪酸を植物性多価不飽和脂肪酸で置き換えると(動物性飽和脂肪酸を減らし、植物性多価不飽和脂肪酸を増やすと)心血管病が減少することが示されている。
  • 飽和脂肪酸を含む総脂質を炭水化物で置換しても(脂質を減らし高炭水化物を増やしても)冠動脈疾患は減少しない。
  • 大規模な前向き観察研究では、飽和脂肪酸摂取が少なく、多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸摂取が多いと心血管病発症率や死亡率が低いことが示されている。
  • 飽和脂肪酸は、動脈硬化や心血管病の主な原因であるLDLコレステロールを増加させ、多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸で置換するとLDLコレステロールが減少する。
  • 飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸で置換すると、中性脂肪が減少する。
  • 飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸で置換すると、動脈硬化が予防・改善される(ヒト以外の霊長類で示されている)。
  • 様々な根拠から、飽和脂肪酸の置換に際しては、多価不飽和脂肪酸(主にn-6、リノール酸)のほうが、一価不飽和脂肪酸(主にオレイン酸)より、心血管病を、若干、より強く予防すると考えられる。
  • 上記は、一般的な健康食、例えば野菜・全果物・ナッツ・蛋白質などをバランスよく摂取するDASH食や地中海食、また、良質な炭水化物(全粒穀物や全果実)の摂取と共に行われることが必要である。
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EPA、DHAサプリメントと心血管疾患の予防

2017年3月17日 更新

−アメリカ心臓協会からの勧告−

2017年3月13日、アメリカ心臓協会(AHA)は心血管疾患予防の目的でのオメガ3(EPA、DHA)サプリメントの投与に関し、複数の無作為化対照試験の結果を基に科学的勧告を公表しましたので、下の表にまとめました。なお、今回の勧告で取り上げられた無作為化対照試験にはわが国で行われたもの(JELIS試験)が含まれていますが、欧米で行われた数々の長期試験ではオメガ3脂肪酸の投与量がわが国での試験の約半量となっています。現在、高用量を用いた複数の試験が欧米で行われていますので、今後、見解が変わる可能性は否定できません。

対象と目的 推奨内容
一般成人での冠動脈疾患予防 不明
糖尿病・境界型糖尿病者での心血管死抑制 投与は推奨しない
心血管疾患の高リスク者での冠動脈疾患予防 投与は推奨しない(妥当とする少数意見あり)
冠動脈疾患を有する患者の再発・突然死予防 投与が妥当
高リスク者での脳卒中予防 投与は推奨しない
脳卒中の再発予防 不明
心不全の予防 不明
心不全患者の入院・死亡抑制 投与が妥当
心房細動の予防 不明
心房細動既往者での再発予防 投与は推奨しない
心臓手術後の心房細動予防 投与は推奨しない

論文(英語)
http://circ.ahajournals.org/content/early/2017/03/13/CIR.0000000000000482

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