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1型糖尿病における運動時の血糖管理(1)

2017年5月26日 更新

運動は循環器系や代謝などに対して望ましい効果をもたらすことから、糖尿病の有無にかかわらず推奨されています。最近、欧米豪の多数の研究者によって1型糖尿病患者の運動時の血糖マネージメントに関するコンセンサスが発表されましたので一部をご紹介します。なお、実際の運動時の対応に関しては主治医にご相談下さい。

運動の種類

  • 有酸素運動: 歩行、サイクリング、ジョギング、水泳など。大きな筋肉を繰り返し動かす運動で、主に酸素を利用して運動エネルギーを産生する。
  • レジスタンス運動: おもり、機器、体重、弾性バンドなどを抵抗として利用し、主に無酸素的に生成されたエネルギー産生を利用する。
  • 高強度インターバル運動: 激しい運動と軽い運動を短時間に繰り返す。

健常者での運動中の代謝

健常者では運動中にほとんど血糖値は変化しない。有酸素運動中にはインスリン分泌が減少、グルカゴン分泌が増加し、肝臓からのブドウ糖放出を促進させ、筋肉でのブドウ糖消費を補う。運動は、インスリンとは無関係に、筋肉でのブドウ糖の取り込みを促進させる。グルカゴン以外のインスリン拮抗(血糖上昇)ホルモンも増加し、肝臓でのブドウ糖産生・放出を促進させる。

1型糖尿病での運動中の血糖値

血中インスリンが低下しないため、肝臓からのブドウ糖放出が増加せず、有酸素運動中には血糖が低下する。通常、有酸素運動開始から45分程度すると血糖が低下し始める。従って、有酸素運動の前に糖質の摂取かインスリン減量、あるいは両者が必要となる。なお、インスリンは皮下注射で投与されているため、投与量を減量してもすぐには血中インスリンが低下しないことに注意が必要である。

レジスタンス運動や高強度インターバル運動では、インスリン拮抗ホルモンの上昇などにより、有酸素運動に比し、血糖値は低下せず、むしろ、軽度の血糖上昇をきたすことがある。全力疾走、重量あげなどの無酸素運動でも血糖が上昇することが多い。

1型糖尿病での運動後の血糖値

運動後も筋肉内のグリコーゲン貯蔵のために筋肉へのブドウ糖取り込みの亢進は持続し、運動後24時間以上に渡って低血糖のリスクが上昇する。午後の運動の場合、夜間低血糖のリスクが上昇する。

運動前の血糖値と対応

90 mg/dL未満の場合 運動前にブドウ糖10〜20gを摂取する。血糖値が90以上になるまで運動を開始しない。頻繁に血糖を測定し、低血糖でないか確認が必要。
90〜124 mg/dLの場合 有酸素運動開始前に10gのブドウ糖を摂取する。無酸素運動や高強度インターバル運動は開始できる。
126〜180 mg/dLの場合 有酸素運動を開始できる。無酸素運動、または、高強度インターバル運動を開始できるが、血糖が上昇しうる。
182〜270 mg/dLの場合 有酸素運動を開始できる。無酸素運動を開始できるが、血糖が上昇しうる。
270 mg/dL以上の場合
高血糖の原因が不明の場合(食後でない場合)には、血中ケトン体を測定する。
中程度以上(1.5 mmol/L以上)のケトン体上昇の場合:
運動は禁忌。早速医療チームのアドバイスを受け血糖管理治療を開始する。
中程度まで(1.4 mmol/L以下)のケトン体上昇:
運動は軽いものにし、短時間(30分以内)にとどめる。運動開始時に少量の補正インスリンが必要かもしれない。
軽度、および、それ以下のケトン体(0.6未満)、または、尿ケトン体2+未満(4 mmol/L未満)の場合:
軽度〜中等度の有酸素運動は開始できる。運動中に血糖が更に上昇しないか血糖を測定すべきである。強い運動は、更に血糖を上昇させうるため、注意深く開始すべきである。

論文(英語)
http://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(17)30014-1/abstract

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