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画期的なβ細胞再生方法

2016年12月12日 更新

膵臓のランゲルハンス島には5種類の細胞が存在します。そのうちβ細胞からは血糖を低下させるインスリンが、α細胞からは血糖を上昇させるグルカゴンが分泌されます。1型糖尿病は主に自己免疫現象によりβ細胞が破壊されインスリンを分泌することができなくなり、血糖が上昇する病気です。

iPS細胞などの幹細胞などを用いてβ細胞を再生する研究が盛んに行われて来ましたが、様々な困難が指摘されています。今回、オーストリアの研究者が膵臓のα細胞をβ細胞に変換する方法を発見し、医学雑誌Cellに報告しました。臨床応用できれば、画期的なβ細胞再生法になります。

以前から、α細胞のArxという遺伝子発現調節因子を不活性化するとα細胞がβ細胞に変換することが知られていました。また、β細胞はインスリンと同時にGABAという物質を分泌し、これらがα細胞表面に存在するインスリン受容体およびGABA受容体に作用するとα細胞からのグルカゴン分泌が低下することも知られていました。

今回、研究者は既存の薬剤の中からArxの作用を阻害する物質を探していく中で、マラリアの治療薬であるアルテミシンがArxの作用を阻害することを見いだしました。アルテミシンやその誘導体であるアルテメテールはα細胞の細胞の内側からGABA受容体の活性を高めることでArxの機能を抑制し、α細胞の特徴的な機能を低下させ、逆に、インスリンの合成や分泌能力を発現させβ細胞化させることを見いだしました。実際に1型糖尿病にした動物にアルテメテールを投与するとβ細胞が増え、血糖も低下したとのことです。また、ヒトから取りだしたランゲルハンス島にアルテメテールを振りかけると、ランゲルハンス島内のインスリンが増加し、培養液中のブドウ糖濃度に応じてインスリンが分泌されたとのことです。

アルテミシンは副作用が少ないマラリア治療薬として知られており、アルテミシンの発見者である中国のTu Youyou博士は大村智博士、William Campbell博士と共に2015年ノーベル医学生理学賞を受賞しています。

1型糖尿病患者さんをマラリヤ治療薬で治療する日が来るのでしょうか?

論文(英語) http://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(16)31531-8

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