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HbA1cは糖尿病治療研究の正しい指標か?
2017年6月8日 更新
最近のいくつかの大規模臨床試験の結果は2型糖尿病の治療に大きな変革をもたらしつつあります。以下に、最近米国医師会雑誌という主要な医学誌に発表された論文(見解)を抜粋してご紹介します。
2型糖尿病治療のゴールは糖尿病合併症の予防を通じて患者のQOLを改善し、寿命も延長させることです。従来、高血糖の改善で合併症予防が可能であると想定され、糖尿病治療薬は血糖やHbA1cを改善させる効果で評価されてきました。しかし、最近のいくつかの大規模臨床試験で、同程度にHbA1cを下げても薬によって合併症予防効果が異なることが示されてきました。糖尿病の研究は、かつてのように、血糖やHbA1cという代理的な指標ではなく、心臓病や死亡率という臨床的結果を評価して治療薬を探索する手法に方向転換しつつあります。
HbA1c7%未満を目標に血糖を低下させるいくつかの臨床試験では、明らかな心血管病予防効果は得らず、また、細小血管障害に関しても、失明や腎不全などの最終的転帰に関する明らかな予防効果は証明されませんでした。一方、異なる糖尿病治療薬を用いて同程度の血糖改善を達成した場合に、心血管病の出現に差が出るかを検討した臨床試験がいくつか行われ、エンパグリフロジンというSGLT2阻害薬やリラグルタイド(海外用量)というGLP-1受容体作動薬で心血管イベント、心血管死、全死亡が減少することが示されました。しかし、DPP-4阻害薬を用いたいくつかの臨床試験ではこのような効果は認められませんでした。これらの結果から、どの様に(どの様な薬を用いて)高血糖を改善させるかが合併症の予防に重要であると考えられるようになってきました。
糖尿病治療は、血糖・HbA1cのレベルだけでなく、個々の患者の合併症の状況などを考慮して行われなければなりません。例えば、心血管疾患の既往を有する患者ではエンパグリフロジンやリラグルタイド(海外用量)を用いることで利益が得られる可能性が考えられます。
細小血管障害に関しても、必ずしもHbA1cの低下でこれらの合併症が予防できるわけではなく、同程度に血糖を下げても同程度の細小血管障害予防効果が期待できるわけではありません。例えば、エンパグリフロジンは血糖コントロールにほとんど差がなくても腎症のリスクを低下させます。セマグルタイド(未発売)というGLP-1受容体作動薬も腎症の進行を防ぎますが網膜症のリスクは増加させます。
従来から使用されている糖尿病治療薬についても、薬剤によってどの様な合併症予防効果が得られるかを検証することが必要です。
論文(英語) http://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2599765
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