2型糖尿病の食事療法

食事療法のポイント

  • 食べ過ぎない
  • 炭水化物 (糖質) の質・量に注意
  • 食品・栄養のバランスを取り、食べる順序に気をつける

過食をしない

2型糖尿病患者さんの多くは肥満しており、あるいは、一見肥満はしていなくても内臓脂肪が過剰傾向です。過食を避け内臓脂肪を減らすと高血糖は改善します。このためには、さまざまな工夫が必要です。

  1. 食前にコップ2杯の水を飲む: 先ず、水で胃をふくらませます。
  2. なるべくゆっくり、よく噛んで食べる: 一口20~30回噛む、一口食べる毎に箸を置く、具材を大きくする、少し硬い食物を食べる (ご飯やパスタは硬めにする、お茶漬けは食べないなど) などの方法があります。さまざまなホルモンの分泌や脳の働きなどに影響し、満腹感が得られやすくなります。
  3. 薄味にする: 副食の味が濃いと、ご飯やパンなどの主食をたくさん食べることになります。また、塩分の過剰摂取をきたし、血圧を上げることにもなります。薄味にして食品本来の味を楽しみましょう。
  4. 満腹になる前、腹七分目、腹八分目で食べるのを止める。

なお、1日のうちで軽度の空腹感を感じる時間があれば、この時に体脂肪が燃焼します。軽度の空腹感を感じたら、これからやせられると喜んでください。但し、糖尿病の飲み薬や注射を使用している患者さんでは、空腹感を感じる場合には血糖が下がりすぎている可能性もありますので、必ず医師に報告してください。

食べる順序に気をつける

食事の初めに、野菜、海藻、キノコ類など糖質が少なく食物繊維に富む食品や、脂質、たんぱく質を摂取し、食事の最後に炭水化物(糖質) (主食、イモ類、カボチャ類、果物) を摂取すると、いろいろなホルモン分泌や胃の動きなどに影響し、満腹感が得られやすくなり、また、食後の血糖の上昇も少なくなります。一方、麺類、パン類などの主食(炭水化物)のみの食事では著しく血糖が上昇します。

参考

糖質と食物繊維を合わせて炭水化物と呼びます。食物繊維はブドウ糖やコレステロールの吸収を抑え、また、便通をよくするなど身体に良い影響をもたらします。特に、食物繊維の中でオクラなどのネバネバした野菜、寒天・ひじき・わかめなどの海藻類、ゴボウ、納豆、アボカド、大麦、ライ麦、そば粉などに多く含まれる水溶性食物繊維は腸内細菌に好影響をもたらすなどの効果も関係して食後の血糖上昇を押さえてくれます。一方、糖質は過剰に摂取すると血糖や中性脂肪を上げるなどの悪影響を及ぼします。なお、健常者や2型糖尿病の患者さんで食後に血糖を直接上昇させるのは糖質のみです。

特に主食を過食しない

多くの方で主食は炭水化物 (糖質) です。炭水化物 (糖質) を過食すると血糖が上昇するため、注意が必要です。

特に、食物繊維などの少ない主食 (糖質)、具体的には

  • 精製穀物: 白米、餅など、および、精製穀物に由来する (小麦粉など) 食品: パン、うどん、パスタなどは血糖を大きく上げてしまいます。
  • 特に、ご飯と麺類、ご飯と餅、ご飯とパンなどの糖質同士の組み合わせでお腹をふくらませようとすると食後に著しく血糖を上げてしまいますので、避けてください。また、甘い菓子パンも避けてください。

主食としては、食物繊維に富む穀物 (非精製穀物、全粒穀物) およびその製品である大麦、日本そば、ライ麦パン、ふすまパンなどがおすすめです。一般的に非精製穀物にはビタミン、ミネラルなども多く含まれていますが、玄米にはヒ素も含まれていますので過食しないようにしてください。いずれにしても、なるべく食事の最後にゆっくり摂取してください。

また、糖質は血糖を上げるだけでなく、過剰に摂取すると体内で飽和脂肪酸 (動物性脂肪) に変わり、中性脂肪を増加させ、さまざまな悪影響をもたらします。なお、逆に、糖質を極端に制限する食事療法を長期的に行った場合の安全性には不明な点がありますので、極端な糖質制限食は、行うにしても、短期間にとどめておく方が無難だと考えられます。

果物

果物は糖質に富む食品ですから、糖尿病の患者さんは食べ過ぎないように気をつけてください。1日の摂取量としては、リンゴなら半個、みかんなら2個、バナナなら1本、柿なら1個程度のいずれかです。一方、果物はカリウムや食物繊維などに富み、適量であれば身体によい効果ももたらします。リンゴ、ブドウなど食べられるものはなるべく皮のまま摂取すると食物繊維なども多く摂ることができます。なお、腎臓の障害が進行しカリウムの摂取を制限されている方は果物を制限しなければなりません。

豆類、イモ類、カボチャ、トウモロコシ

これらも炭水化物に富む食品です。豆類はあまり血糖を上げませんが、イモ類は血糖を大きく上げます。なるべく食事の最後に摂取してください。

菓子類

菓子は基本的に糖質を多く含みますので、食べるにしても少量にしてください。

野菜・海藻類・キノコ類

野菜、特に緑黄色野菜は食物繊維、カリウムなどのミネラル、ビタミンなどを多く含み血圧を下げる効果も期待できますので積極的に摂取してください。海藻やキノコ類も食物繊維を多く含みます。食事の初めに摂取してください。なお、海藻はヨウ素を多く含みますので、橋本病や甲状腺機能低下症の方は食べ過ぎないようにしてください。

液体の油や魚の油を摂取する

ココナッツオイルとパーム油以外の植物油は常温で液体です。このような液体の油や魚の油は身体によい影響をもたらします。いずれも、不飽和脂肪酸と呼ばれる成分が多く、その多くが必須脂肪酸とされ、必ず摂取しなければなりません。液体の油にはキャノーラ (菜種) 油、大豆油、綿実油、コーン油、オリーブ油、亜麻仁油などさまざまな種類がありますので、偏らないようにいろいろ摂取してください。特に食事の初めに摂取すると胃の運動やさまざまなホルモン分泌に影響し満腹感が得られやすくなります。また、血糖がゆっくり上昇し、ゆっくり下がるようになります。さらに、動脈硬化を予防する効果も期待されています。サラダドレッシング、和え物、炒め物、揚げ物などに利用してください。なお、液体の油は加熱を繰り返すと有害な成分を生成することがありますので注意が必要です。

ナッツ

アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツなどのナッツは不飽和脂肪酸、たんぱく質、食物繊維、ビタミンE、ビタミンB、カリウム・マグネシウムなどのミネラル、ポリフェノールに富む食品です。ナッツは体重を増やさず、心血管病、高血圧の予防効果があり、米国政府は国民に積極的な摂取を勧めています。間食などで摂取する際には、無塩のものにしてください。

主菜

たんぱく質は筋肉など身体を作るための必須の栄養素です。たんぱく質に富む副食 (主菜) はなるべく毎食摂取してください。魚介類、獣肉類、家禽肉類、大豆製品 (豆腐、納豆、枝豆など)、卵、チーズ等の乳製品などです。動物性蛋白質にかたよらないようにし、なるべく食事の初めに摂取してください。ホルモン分泌などに影響し、その後の主食(糖質)摂取による血糖上昇を押さえてくれます。

また、ゆで卵は血糖を上げず、間食にも利用できます。

なお、加工肉 (ハム、ソーセージ、ベーコンなど) の大量摂取は動脈硬化や発癌を促進させる可能性があります。

乳製品

乳製品はカルシウム、たんぱく質などに富む食品です。毎日、牛乳なら180mL程度、ヨーグルトなら180g程度を摂取してください。間食などに利用してください。

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